葬儀のこと

湯灌(ゆかん)とは?費用や流れ、ご家族ができることを分かりやすく解説

身内が亡くなられ、葬儀の準備を進める中で「湯灌(ゆかん)」という言葉を初めて耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。大切な故人様とのお別れの儀式について、分からないことがあるのは当然のことです。

湯灌は、故人様の尊厳を守り、安らかな旅立ちを願うために行われる、古くからの大切な儀式です。

この記事では、湯灌の意味や流れ、費用について、分かりやすく解説していきます。


湯灌とは?故人の尊厳を守り、安らかな旅立ちを願う儀式

湯灌とは、故人様のお体を棺に納める前に、お風呂に入れて洗い清める儀式のことです。 単に体の汚れを落とすだけでなく、故人様への感謝と敬意を表し、安らかな旅立ちを願う大切な意味が込められています。専門の湯灌師が、ご遺族の見守る中で執り行います。

湯灌が持つふたつの大切な意味

湯灌には、大きく分けて二つの意味があります。

一つは、現世での悩みや苦しみ、煩悩を洗い流し、来世への旅立ちを清らかな状態で行えるようにするという宗教的な意味合いです。

 もう一つは、赤ちゃんが生まれた時に産湯につかるように、新たな世界へ生まれ変わるための準備をするという意味も込められています。

湯灌を行う目的

湯灌の主な目的は、故人様の体を清潔にし、生前の安らかなお姿に近づけることです。闘病生活が長かった方や、お風呂に入れない状況が続いていた方のお体を清めることで、ご遺族は安心して故人様を見送ることができます。

また、体を温め、清めることで、死後硬直が和らぎ、より自然な表情になることもあります。

湯灌の具体的な流れと手順

湯灌は、専用の浴槽などを使い、専門のスタッフである「湯灌師」によって執り行われます。ご遺族に立ち会っていただきながら、心を込めて一体一体の儀式を進めていきます。

手順1:ご挨拶と湯灌の儀式に関する説明

まず、湯灌師がご遺族にご挨拶し、これから行う湯灌の儀式について丁寧に説明します。ご遺族の気持ちに寄り添い、故人様への敬意を払いながら、儀式が滞りなく進むように配慮します。

手順2:逆さ水の儀でお体を清める

湯灌では「逆さ水(さかさみず)」という作法でお清めを行います。これは、お湯に水を加えて温度を調整する通常のやり方とは逆に、水にお湯を注いで湯温を調整する方法です。

この世とあの世を区別するための、古くからの慣習です。ご遺族が参加される場合は、足元から胸元へ、交替でお湯をかけていただきます。

手順3:洗体と洗髪

ご遺族の見えないように配慮しながら、全身を丁寧に洗い清めます。シャンプーやボディソープを使い、髪や体を洗い流します。この時、故人様の肌を傷つけないよう、細心の注意が払われます。

手順4:お顔剃りと死化粧

お体を清めた後、男性の場合はお顔剃りを行います。女性の場合はもちろん、男性の場合も、顔色を整え、生前の穏やかな表情に近づけるための「死化粧(しにげしょう)」を施します。ご遺族が愛用されていた化粧品を使うことも可能です。

儀式の内容

説明

洗体・洗髪

全身を丁寧に洗い清め、清潔な状態にします。

お顔剃り

主に男性の故人様に行い、身だしなみを整えます。

死化粧

血色を良く見せ、安らかな表情になるように化粧を施します。

手順5:旅立ちの衣装への着付け

全身を清めた後、新しい旅立ちのための衣装(仏衣)に着付けを行います。宗教・宗派によって異なりますが、一般的には白の経帷子(きょうかたびら)を着用します。故人様が生前愛用されていたお洋服に着せ替えることも可能です。

手順6:納棺

身支度がすべて整ったら、ご遺族の手で故人様を棺へとお納めします。これを「納棺の儀」と呼びます。故人様の愛用品などを一緒に納め、最後のお別れの準備を整えます。

湯灌にかかる費用の相場は?

湯灌を依頼する際に、気になるのが費用です。ここでは、湯灌にかかる費用の相場と、確認すべき点について解説します。

 湯灌の費用相場

湯灌を専門の業者や葬儀社に依頼する場合の費用相場は、一般的に5万円から10万円程度です。

この費用には、湯灌師の人件費、専用の浴槽や備品の使用料、旅立ちの衣装代などが含まれています。ただし、サービス内容によって費用は変動するため、事前に詳細な見積もりを確認することが大切です。

葬儀プランに含まれているか確認

葬儀社によっては、あらかじめ葬儀プランの中に湯灌が含まれている場合があります。一方で、オプションとして別途費用が必要になるケースも少なくありません。

後から追加料金で慌てることがないよう、最初の見積もりの段階で、プラン内容に湯灌が含まれているかどうかをしっかりと確認しましょう。

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ご遺族が湯灌を行う3つのメリット

湯灌は、故人様のためだけでなく、残されたご遺族にとっても大切な意味を持つ儀式です。ここでは、湯灌を行う主なメリットを3つご紹介します。

故人の尊厳を守り、安らかなお顔で送り出せる

闘病生活などでお風呂に入れなかった故人様のお体を清めることで、生前のきれい好きな姿に戻してあげたい、というご遺族の願いを叶えることができます。体を清潔にし、身なりを整えることで、故人様の尊厳を守り、安らかな表情で送り出すことができます。

衛生的に故人を保つことができる

お体を洗い清めることは、ご遺体を衛生的に保つ上でも重要です。特に夏場や、ご逝去から葬儀まで日数が空く場合には、感染症のリスクを低減させる効果も期待できます。

ご遺族の心のケアにつながる

湯灌の儀式にご遺族が立ち会い、故人様のお体を清めるお手伝いをすることは、死という現実を受け入れ、故人様との最後の時間を過ごす貴重な機会となります。「最後に体を綺麗にしてあげられた」という思いは、ご遺族の深い悲しみを癒し、心のケア(グリーフケア)につながると言われています。

湯灌を行う際に知っておきたい注意点

湯灌を行うにあたり、事前に知っておくべき点がいくつかあります。スムーズに儀式を執り行うために、以下の点を確認しておきましょう。

湯灌を行うための場所を確保する

ご自宅で湯灌を行う場合、専用の浴槽を設置するためのスペースが必要になります。畳2畳分ほどの広さがあれば可能とされていますが、事前に業者に確認しておくと安心です。マンションなどの集合住宅でも行える場合が多いですが、エレベーターの有無なども伝えておきましょう。

湯灌にかかる時間を把握しておく

湯灌の儀式全体にかかる時間は、おおよそ1時間から1時間半程度です。準備から後片付けまで含めると、2時間ほど見ておくと良いでしょう。葬儀のスケジュールを組む上で、この時間を考慮しておく必要があります。

湯灌とよく似た儀式との違い

湯灌と混同されやすい儀式に「清拭(せいしき)」と「エンバーミング」があります。それぞれの違いを理解し、故人様やご遺族の意向に合った方法を選びましょう。

 清拭(せいしき)との違い

清拭とは、アルコールを含んだ脱脂綿などでご遺体を拭き、体を清める方法です。病院で亡くなられた際に、看護師によって行われるエンゼルケア(死後処置)も清拭の一環です。湯灌がお湯を使って全身を洗い流すのに対し、清拭は体を拭くだけという点が大きな違いです。

エンバーミングとの違い

エンバーミングは、ご遺体に防腐・殺菌処理を施し、長期的な保存を可能にする技術です。 湯灌が体を洗い清める儀式的な側面に重きを置くのに対し、エンバーミングはご遺体の保存と修復を目的とした化学的な処置であるという点で根本的に異なります。

項目

湯灌

清拭

エンバーミング

目的

体を洗い清め、安らかな旅立ちを願う

体を拭いて清める

遺体の長期保存、修復、殺菌

方法

お湯を使って全身を洗浄

アルコールなどで体を拭く

血管を通じて薬剤を注入

費用相場

5万円~10万円

葬儀プランに含まれることが多い

15万円~25万円

場所

自宅、斎場など

病院、自宅など

専用施設

 

湯灌は必ず行わなければならない?

湯灌は故人を弔うための大切な儀式ですが、必ず行わなければならないという決まりはありません。行うかどうかは、故人様の遺志やご遺族の考え方、宗教的な背景などを考慮して判断します。

湯灌を行うかどうかの判断基準

湯灌を行うかどうかは、ご遺族の気持ちが最も大切です。「故人を綺麗な姿で送りたい」「感謝を込めて体を清めてあげたい」という思いがあるならば、湯灌を行う価値は十分にあるでしょう。

一方で、経済的な事情や、儀式を簡素に行いたいという考えから、湯灌を行わない選択をすることも決して間違いではありません。葬儀社の担当者とよく相談し、納得のいく形で故人様を見送ることが重要です。

宗教や宗派による考え方の違い

湯灌は仏教の教えに基づいて広まった儀式ですが、特定の宗教・宗派に限定されたものではありません。キリスト教など他の宗教においても、故人の体を清めるという考え方は共通しており、湯灌が行われることがあります。

ただし、地域や宗派の慣習によっては独自の作法がある場合もあるため、菩提寺や教会、葬儀社の担当者に確認すると良いでしょう。

まとめ

湯灌は、故人様の現世での苦しみを洗い流し、来世への安らかな旅立ちを願う、日本の美しい伝統儀式です。故人様の尊厳を守るだけでなく、ご遺族の心のケアにも繋がる大切な時間となります。本記事を参考に、湯灌について理解を深め、後悔のないお別れの形を選んでください。

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