家族葬の祭壇相場はいくら？種類別の費用と後悔しない選び方を解説

ご家族が亡くなられ、深い悲しみの中で葬儀の準備を進めなければならないとき、「祭壇はどれを選べばいいのだろう」「費用は一体いくらかかるのだろう」といった不安を感じる方は少なくありません。

特に、親しい方々のみで執り行う家族葬では、故人にふさわしい形で見送りたいという想いと、費用を抑えたいという現実的な問題の間で悩むことも多いでしょう。

この記事では、家族葬の祭壇にかかる費用の相場から、代表的な祭壇の種類、後悔しないための選び方のポイントまで、分かりやすく解説します。心穏やかに故人様との最期の時間をお過ごしいただくための一助となれば幸いです。

家族葬の祭壇にかかる費用相場は20万～50万円

家族葬で用意される祭壇の費用相場は、一般的に20万円から50万円程度です。

もちろん、これはあくまで目安であり、祭壇の種類や大きさ、デザインによって価格は大きく変動します。比較的小さくシンプルなものであれば10万円台から、一方で故人の希望を反映したこだわりの花祭壇などでは100万円以上になるケースもあります。大切なのは、ご予算と「どのような形で見送りたいか」という想いのバランスを取ることです。

【種類別】祭壇の費用相場一覧

祭壇は、その種類によって費用が大きく異なります。ここでは代表的な祭壇の種類と、それぞれの費用相場をまとめました。ご自身の希望や予算に合わせて検討する際の参考にしてください。

祭壇の価格は何によって決まる？

祭壇の価格は、いくつかの要素によって決まります。見積もりを確認する際には、どの部分に費用がかかっているのかを理解しておきましょう。

主な価格決定要因は、祭壇の大きさ（サイズ）、デザインの複雑さ、そして使用する素材です。特に花祭壇の場合は、使用する生花の種類や量、季節によって価格が大きく変動します。例えば、希少な花を使ったり、多くの花でボリュームを出したりすると、その分費用は高くなります。葬儀社と打ち合わせる際には、どの要素を重視したいかを明確に伝えることで、予算内で希望に近い祭壇を実現しやすくなります。

葬儀プランに含まれる祭壇費用の注意点

多くの葬儀社では、「家族葬プラン」として、祭壇を含む一式の費用をパッケージ料金で提示しています。総額が分かりやすく便利ですが、注意点もあります。

プランに含まれる祭壇は、最も基本的なデザインやサイズのことが多いという点です。写真で見た華やかな祭壇をイメージしていると、実際のプラン内の祭壇が質素に感じられるかもしれません。祭壇のデザインを変更したり、花の量を追加したりする場合は、追加料金が発生することがほとんどです。契約前には、プラン内にどのような祭壇が含まれているのか、仕様変更にはどのくらいの追加費用がかかるのかを必ず確認しましょう。

家族葬で人気の祭壇3種類

家族葬では、故人や遺族の想いを反映しやすい、さまざまな種類の祭壇が選ばれています。ここでは、特に多くの方に選ばれている代表的な3つの祭壇について、それぞれの特徴をご紹介します。

伝統的で格式のある「白木祭壇」

白木祭壇は、その名の通り塗装などを施していない白木で作られた、日本の仏式葬儀で古くから用いられている伝統的な祭壇です。

寺院の本堂を模したとされる構造で、格式が高く、厳粛な雰囲気を醸し出します。シンプルで落ち着きのある空間で故人を見送りたい場合や、伝統や格式を重んじるご親族がいる場合に適しています。多くの葬儀社の基本プランには、この白木祭壇が含まれていることが多いです。

最も人気で故人らしさを出せる「花祭壇」

現在、家族葬で最も人気があるのが、生花をふんだんに使用した花祭壇です。

白木祭壇の周りを花で飾る形式から、祭壇全体を生花で作り上げる形式まで、デザインは多岐にわたります。花祭壇の最大の魅力は、デザインの自由度の高さです。故人が好きだった花や色合いを取り入れたり、趣味や人柄を表現したデザインにしたりすることで、世界に一つだけの、故人らしい温かみのある祭壇を作れます。宗教色を抑えたい場合にも選ばれやすい祭壇です。

宗教色を抑えた「モダン祭壇・オリジナル祭壇」

近年では、伝統的な形式にとらわれず、より自由な発想で作られるモダン祭壇やオリジナル祭壇も増えています。

モダン祭壇は、直線的なデザインや間接照明などを用いて、現代的でスタイリッシュな空間を演出します。特定の宗教・宗派に属さない「無宗教葬」などで選ばれることが多いです。オリジナル祭壇では、故人の趣味であったゴルフ用品や愛用していた楽器、思い出の写真などを飾り、故人の生前の姿を偲ぶ唯一無二の空間を作り上げることができます。

家族葬の祭壇費用を安く抑える4つのコツ

故人を思う気持ちは大切にしつつも、葬儀費用はできるだけ抑えたいと考えるのは自然なことです。ここでは、祭壇にかかる費用を賢く抑えるための具体的な方法を4つご紹介します。

複数の葬儀社から見積もりを取得する

最も重要で効果的な方法は、複数の葬儀社から見積もりを取って比較検討することです。

葬儀費用、特に祭壇の価格は、葬儀社によって大きく異なる場合があります。同じような規模やデザインの祭壇でも、料金設定に差があることは少なくありません。いくつかの社から見積もりを取り寄せることで、費用の相場感を把握でき、内容と価格のバランスが取れた、納得のいく葬儀社を選べます。時間的に余裕がない場合でも、電話などで概算の費用を確認することをおすすめします。

祭壇のランクや花のボリュームを調整する

祭壇の費用は、そのグレードや装飾の量に大きく左右されます。

費用を抑えたい場合は、祭壇のランクを一つ下げる、あるいは花祭壇の花の量を少し減らすといった調整を検討してみましょう。例えば、祭壇の両脇に飾る「供花（きょうか・くげ）」を親族で出し合うことで、祭壇本体は少しシンプルにしても、全体の見た目は華やかに保てます。どこにお金をかけたいかの優先順位を考え、葬儀社の担当者と相談しながら調整しましょう。

葬儀社の会員制度や割引を活用する

多くの葬儀社では、生前に会員登録をすることで葬儀費用が割引になる「互助会」や「会員制度」を設けています。

割引率は葬儀社によって様々ですが、祭壇費用を含む基本料金が10%〜20%割引になることもあり、費用を抑える上で非常に有効です。もしもの時が訪れる前に、いくつかの葬儀社の資料請求をしたり、事前相談をしたりする中で、会員制度についても確認しておくと良いでしょう。

「祭壇なし」の葬儀を検討する

費用を最大限に抑えたい場合や、形式にとらわれずにシンプルに見送りたいという考えがある場合には、「祭壇なし」という選択肢もあります。

祭壇を設けない代わりに、棺の周りに故人の好きだった花や思い出の品、遺影写真を飾ることで、温かいお別れの空間が作れます。ただし、ご親族の中には祭壇がないことに違和感を覚える方もいるかもしれません。事前に家族や主な親族とよく話し合い、理解を得ておきましょう。

後悔しない！家族葬の祭壇選びで重要な4つのポイント

祭壇は、故人を偲び、お別れをするための中心となる大切な場所です。価格だけでなく、様々な視点から検討することで、後悔のない祭壇選びにつながります。

ポイント1：故人や遺族の意向を反映させる

最も大切にしたいのは、故人やご遺族の想いです。

故人が生前に好きだった色や花、趣味などがあれば、それを祭壇のデザインに取り入れることで、より故人らしい、温かみのあるお別れができます。例えば、「明るく華やかな雰囲気が好きだったから、ピンクや黄色の花をたくさん使ってほしい」「山登りが趣味だったので、緑を基調とした自然な雰囲気にしてほしい」など、家族で故人の思い出を語り合いながらイメージを共有し、葬儀社に伝えることが理想の祭壇への第一歩です。

ポイント2：宗教・宗派のしきたりを確認する

もし特定の宗教・宗派に則って葬儀を行う場合は、そのしきたりに沿った祭壇を選ぶ必要があります。

仏式、神式、キリスト教式など、宗教によって祭壇の形式や飾り方が異なります。特に、菩提寺がある場合は、どのような祭壇が適切か事前に確認しておくとスムーズです。ご自身の宗派が分からない場合でも、葬儀社の担当者は専門知識を持っていますので、正直に伝えて相談すれば適切なアドバイスをもらえます。

ポイント3：葬儀会場の規模や雰囲気に合わせる

祭壇は、葬儀を執り行う会場の広さや全体の雰囲気とのバランスも考慮して選ぶ必要があります。

例えば、こぢんまりとしたアットホームな式場に、大きすぎて威圧感のある祭壇を置くと、バランスが悪くなってしまいます。逆に、広い会場に小さな祭壇では、少し寂しい印象を与えてしまうかもしれません。会場の収容人数や天井の高さ、壁の色などを考慮し、空間全体として調和の取れた祭壇を選ぶことが、心の落ち着く空間づくりにつながります。

ポイント4：予算の上限を明確に伝える

葬儀社との打ち合わせの際には、最初に予算の上限をはっきりと伝えることが非常に重要です。予算を伝えることで、葬儀社はその範囲内で実現可能な最善の提案をしてくれます。

祭壇を見ていると、「もっと華やかにしてあげたい」という気持ちから、つい費用が高額になってしまうことがあります。あらかじめ上限を決めておくことで、冷静な判断がしやすくなり、後から「思ったより費用がかさんでしまった」という事態を防げます。

祭壇費用だけではない！葬儀全体でかかる費用内訳

家族葬の費用を考える際、祭壇費用は大きな割合を占めますが、それ以外にも様々な費用が発生します。全体像を把握しておくことで、より正確な資金計画を立てることができます。葬儀費用は、大きく分けて以下の3つで構成されます。

【関連記事】【家族葬の費用】相場と内訳を徹底解説！賢く安くする方法も紹介

葬儀一式費用（基本料金）

これは葬儀を執り行うための基本的なサービス費用で、多くの葬儀社がプラン料金として提示している部分です。

飲食接待費用

通夜や告別式で参列者に振る舞う食事や、いただいた香典へのお返しなど、おもてなしに関する費用です。参列者の人数によって大きく変動します。

寺院関連費用

仏式の葬儀で、僧侶にお経をあげてもらう場合などに必要となる費用です。一般的には「お布施」としてお渡しします。

【関連記事】家族葬のお布施費用はいくら？相場と内訳、失礼のない渡し方のマナーを解説します

まとめ

家族葬の祭壇選びは、故人への感謝と想いを形にする大切なプロセスです。

祭壇の費用相場は20万円から50万円が中心ですが、種類や規模によって大きく異なります。伝統的な「白木祭壇」、人気の「花祭壇」、自由度の高い「モダン祭壇」など、それぞれの特徴を理解し、故人らしさやご遺族の意向を反映させることが重要です。

費用を抑えるためには、複数の葬儀社から見積もりを取ることや、祭壇の規模を調整することが有効です。しかし、最も大切なのは、費用面だけで判断するのではなく、故人やご家族が心から納得できる形でお別れをすることです。この記事でご紹介したポイントを参考に、後悔のない、心のこもった祭壇を選び、故人様との最期の時間を大切にお過ごしください。

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佐藤礼子

厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
遺体感染管理士出身の新潟で広告業などを経験し、出産・子育てを経て東京へ移住。
縁あって出合った司会の仕事をきっかけに葬儀業界へ、年間300件のお別れに立ち会い、2021年、株式会社 葬援の取締役に就任。