ご家族が亡くなられた直後、葬儀の準備を進めることは精神的にも体力的にも大きな負担となることでしょう。近年、「故人が慣れ親しんだ自宅から送り出してあげたい」という想いから、自宅での葬儀を検討される方もいらっしゃいます。
しかし、いざ自宅葬を行うとなると、「費用はどれくらいかかるのだろう」「何から準備すればいいのか分からない」といった不安や疑問が浮かぶのは当然のことです。
この記事では、自宅葬にかかる費用の相場や内訳、メリット・デメリット、そして準備の流れについて分かりやすく解説します。故人との最期の時間を心穏やかに過ごすために、ぜひ参考にしてください。
自宅葬とは?基本的な定義と特徴
自宅葬について考える最初のステップとして、まずはその基本的な定義と、よく似た形式である「家族葬」との違いを理解しておくことが大切です。大切な方とのお別れの形を検討する上で、それぞれの特徴を知っておきましょう。
故人を住み慣れた家から送り出す葬儀
自宅葬(じたくそう)とは、その名の通り、故人が長年住み慣れたご自宅で通夜や葬儀・告別式を行う葬儀形式のことです。
斎場やセレモニーホールといった専用の施設を借りるのではなく、思い出の詰まった我が家を儀式の場とします。かつては日本の葬儀の主流でしたが、生活様式の変化とともに斎場で行う葬儀が一般的になりました。しかし近年、故人との最後の時間をゆっくりと過ごしたい、形式にとらわれず温かく見送りたいというニーズから、再び注目されています。
家族葬との違いは「場所」
自宅葬とよく比較されるのが「家族葬」です。二つの最も大きな違いは、「場所」にあります。
家族葬は、家族や親族、親しい友人など、参列者を限定して行う小規模な葬儀”形式”を指す言葉です。そのため、行う場所は斎場、ご自宅のどちらでもあり得ます。一方で、自宅葬は「自宅で行う」という”場所”に焦点を当てた呼び方です。つまり、「自宅で行う家族葬」という形が、近年多く選ばれている選択肢の一つと言えるでしょう。
自宅葬にかかる費用の相場と内訳

自宅葬を検討する上で、最も気になるのが費用についてではないでしょうか。ここでは、具体的な費用の相場からその内訳、そして一般的な葬儀との比較まで詳しく解説します。
【関連記事】自宅で家族葬を行うには?費用や流れ、メリット・デメリットを徹底解説
自宅葬の費用相場は40万~60万円
自宅葬にかかる費用の全国的な相場は、40万円~60万円程度です。
葬儀そのものに必要な物品や人件費、車両費などが含まれます。斎場を利用する一般的な葬儀の費用相場が100万円以上であることを考えると、自宅葬は会場使用料がかからない分、費用を大きく抑えることが可能です。ただし、この金額はあくまで目安であり、参列者の人数や祭壇の規模、依頼する葬儀社のプランによって変動します。
費用の主な内訳
葬儀社が提供する自宅葬プランには、通常、葬儀を執り行うために最低限必要なものが含まれています。後から「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、何が含まれているのかを事前に確認しましょう。
| 項目 | 内容 |
| 基本料金 | 祭壇、棺、遺影写真、枕飾り、骨壺、ドライアイス、役所手続き代行など |
| 人件費 | 運営スタッフ、司会進行、納棺師など |
| 車両費 | 寝台車(病院~自宅)、霊柩車(自宅~火葬場)の費用 |
| その他 | 設営・撤去費用など |
一般的な葬儀との費用比較
自宅葬がなぜ費用を抑えられるのか、斎場で行う一般的な葬儀と比較してみましょう。
最も大きな違いは、会場使用料の有無です。斎場を利用する場合、式場のレンタル料や控室の使用料が発生しますが、自宅葬ではこれらが一切かかりません。また、ご遺体の安置も自宅で行うため、斎場の安置施設利用料も不要です。
| 費用項目 | 自宅葬 | 一般的な葬儀(斎場利用) |
| 会場使用料 | 0円 | 10万~30万円 |
| ご遺体安置料 | 0円 | 1日あたり1万~3万円 |
| 基本料金 | 30万~50万円 | 50万~100万円 |
| 飲食費・返礼品費 | 実費(規模による) | 実費(規模による) |
| 宗教者へのお礼 | 実費(同等) | 実費(同等) |
| 合計(目安) | 40万~60万円 | 100万円~ |
プラン料金以外で発生する追加費用
提示されたプラン料金だけで全てが賄えるわけではない点に注意が必要です。状況によっては、以下のような追加費用が発生することがあります。
- 飲食費・返礼品費:通夜振る舞いや精進落としの料理、会葬者への返礼品にかかる費用です。
- 宗教者へのお礼(お布施など):僧侶など宗教者を招く場合に必要となる謝礼です。
- 火葬場利用料:火葬を行うための費用で、地域や公営か民営かによって金額が大きく異なります。
- その他:ご遺体の搬送距離がプランの規定を超えた場合の追加料金や、祭壇を生花で豪華にするなどのオプション費用がかかる可能性があります。
自宅葬のメリット

費用面以外にも、自宅葬には多くのメリットがあります。故人やご遺族にとって、心穏やかなお別れの時間を持つための魅力的な選択肢となり得ます。
メリット1:葬儀費用を抑えられる
前述の通り、自宅葬の最大のメリットは経済的な負担を軽減できる点です。
斎場の利用料や安置料がかからないため、葬儀全体の費用を大幅に抑えられます。ご遺族は費用に関する心配を少しでも減らし、故人様とのお別れに集中できるのです。
メリット2:時間を気にせず故人と過ごせる
斎場を利用する場合は通夜後の面会時間が制限されていることもあるため、次の予約の時間を気にしながら過ごさなければならないことがあります。
その点、自宅葬であれば時間の制約がありません。夜通し故人に寄り添い、ご家族のペースで思い出を語り合いながら、心ゆくまで最期の時間を共に過ごせます。
メリット3:形式にとらわれない自由な見送りができる
自宅というプライベートな空間だからこそ、形式ばった儀礼にとらわれず、故人らしい自由な形でお見送りできるのも大きな魅力です。
例えば、故人が好きだった音楽を流したり、愛用品を飾ったり、思い出の映像を上映したりと、温かい雰囲気の中でのお別れが可能です。ご家族の希望に沿った、オーダーメイドの葬儀を実現しやすいと言えるでしょう。
自宅葬を行う際の注意点
多くのメリットがある一方で、自宅葬を執り行うためにはクリアすべき課題もあります。後悔のないお別れにするために、事前にデメリットや注意点をしっかりと把握しておきましょう。
| 注意点 | 具体的な対応策 |
| スペース確保 | 6畳以上の部屋が2部屋以上あるか確認。 不要な家具は一時的に移動させる。 |
| 近隣への配慮 | 事前にご挨拶に伺い、葬儀を行う旨を伝える。 駐車スペースの案内をする。 |
| 準備と片付け | 葬儀社にどこまで手伝ってもらえるか確認。 親族で分担を決めておく。 |
| 集合住宅の規約 | 管理規約を確認し、管理会社や大家さんに許可を取る。 |
ご遺体の安置や参列者用のスペースを確保する必要がある
自宅葬を行うためには、ご遺体を安置し、祭壇を設置し、参列者が着席できるスペースが必要です。
一般的には、6畳以上の部屋が2部屋(ご安置・祭壇の部屋、僧侶や親族の控室)あると良いとされています。参列者の人数によっては、さらに広いスペースが必要になるため、間取りや家具の配置を考慮する必要があります。
車や人の出入りなどで近隣住民への配慮が必要になる
人の出入りや読経の声、線香の香りなどが、近隣の迷惑にならないよう配慮が不可欠です。
特に集合住宅の場合は、両隣や上下階の住民へ事前に事情を説明し、理解を得ておくとトラブルを防げます。また、参列者用の駐車スペースが確保できない場合は、公共交通機関の利用を案内するなどの対応も必要です。
準備と片付けはすべて自身で行うことになる
斎場であれば専門スタッフが行ってくれる会場の設営や片付けも、自宅葬ではご家族が主体となって行う必要があります。
葬儀前には、祭壇を設置するために家具を移動させたり、部屋を片付けたりする手間がかかります。葬儀後も、元の生活空間に戻すための片付けが必要です。悲しみの中でこれらの作業を行うのは、心身ともに大きな負担となる可能性があります。
集合住宅では規約の確認が必要になる
マンションやアパートなどの集合住宅では、管理規約によってご遺体の搬入や自宅での葬儀が禁止されている場合があります。
また、エレベーターの広さによっては棺を運び込めないケースも考えられます。自宅葬を検討する際は、まず管理規約を確認し、管理人や大家さんへの相談が必須です。
自宅葬の一般的な流れ

実際に自宅葬を行う場合、どのような流れで進むのでしょうか。ご逝去から火葬までの一般的な手順を時系列でご紹介します。いざという時に慌てないためにも、全体の流れを把握しておきましょう。
【関連記事】家族葬の流れと日程は?注意点から依頼先の選び方まで解説
1.ご逝去からご安置
医師からご臨終を告げられた後、最初に行うのが葬儀社への連絡です。病院で亡くなった場合は、寝台車でご自宅までご遺体を搬送してもらう必要があります。ご自宅に到着したら、お布団にご遺体を安置し、枕元に「枕飾り」を設置します。
2.葬儀社との打ち合わせ
ご遺体の安置が終わったら、葬儀社の担当者と具体的な打ち合わせを行います。喪主を誰にするか、葬儀の日程、参列者の人数、費用の見積もりなどを詳細に決めていきます。この時に、不安な点や要望は遠慮なく伝え、納得のいくプランを選びましょう。
3.納棺から通夜式
通夜式の前に、故人様のお体を清め、死装束を着せて棺に納める「納棺の儀」を執り行います。ご家族も立ち会い、故人様の愛用品などを一緒に納めることができます。その後、祭壇を飾り、僧侶をお迎えして通夜式を始めます。通夜式の後は、参列者と故人を偲びながら食事(通夜振る舞い)を共にします。
4.葬儀・告別式から火葬
通夜の翌日に、葬儀・告別式を執り行います。僧侶の読経、弔辞・弔電の紹介、お焼香と進み、最後にお花などを棺に入れながら故人との最期のお別れをします。その後、霊柩車で火葬場へ向かい、火葬、お骨上げとなります。火葬後に、親族で会食(精進落とし)を行うのが一般的です。
自宅葬の負担を減らし費用を抑える方法
自宅葬のメリットを最大限に活かし、デメリットを軽減するためにはいくつかのポイントがあります。心穏やかに、そして経済的な負担も少なく故人様を見送るための方法をご紹介します。
信頼できる葬儀社のプランを利用する
準備や片付けの手間といった自宅葬の負担を大きく軽減するためには、自宅葬の実績が豊富な葬儀社に依頼することが最も効果的です。
専門のスタッフが、スペースに合わせた祭壇の設営や、近隣への配慮、当日の進行などを全面的にサポートしてくれます。複数の葬儀社から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討して、信頼できる一社を選びましょう。
参列者の人数を絞る
費用を抑えるという観点では、参列者の人数を絞ることが直接的に繋がります。
人数が少なければ、飲食費や返礼品費を削減できるだけでなく、より小規模なスペースでの施行が可能になります。故人と特に親しかった方々だけで見送ることで、より温かく、心のこもったお別れの時間を持つことができるでしょう。
補助金制度を確認する
多くの方がご存知ないかもしれませんが、公的な健康保険(国民健康保険や社会保険)の加入者が亡くなった場合、葬祭費(埋葬料)として補助金が支給される制度があります。
自治体や加入している保険組合によって金額は異なりますが、おおむね3万円から7万円が支給されます。申請しないと受け取れないため、忘れずに市区町村の役所や健康保険組合に問い合わせて手続きを行いましょう。
まとめ
本記事では、自宅葬にかかる費用を中心に、そのメリット・デメリットや流れについて解説しました。自宅葬は、費用を抑えながら、故人との思い出が詰まった家で心ゆくまでお別れができる、非常に魅力的な選択肢です。
しかし、スペースの確保や近隣への配慮など、事前に準備すべき点も少なくありません。この記事で得た知識をもとに、ご家族でよく話し合い、信頼できる葬儀社に相談しながら、後悔のないお別れの形を見つけてください。
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厚生労働省認定 1級葬祭ディレクター
遺体感染管理士出身の新潟で広告業などを経験し、出産・子育てを経て東京へ移住。
縁あって出合った司会の仕事をきっかけに葬儀業界へ、年間300件のお別れに立ち会い、2021年、株式会社 葬援の取締役に就任。

